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Perfect days [映画]

カンヌ映画祭で役所広司さんが主演男優賞をとった映画、ようやく映画館へ
見に行ってまいりました

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毎日毎日、判で押したように同じ暮らしを続ける平山
well orderedというのかな
本棚、育てている植物の手入れ、机の上、玄関、布団のたたみ方も、ひげの手入れも
何もかもきちんと同じ手順で

持ち物は最低限。彼の仕事は渋谷区のモダンなトイレの掃除
手は抜かない
そこまでやるか、というくらいきちんと
誰も見ていないところまで、きちんと
彼の美学なのかな

そして、好きなものは木漏れ日、カセットテープで聞く音楽、銭湯、ママチャリ
行きつけのお店で仕事帰りに飲むお酒、人とのちょっとした触れ合い
スカイツリーの見える街の、本当に古びたアパートの一室が彼の世界

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何があってどうしてこういう生活なのかの説明は一切ない
私たちは、彼の生活からきっと傷ついたことがあるのだろうな、と推し量ることしか
できない

年明け日本を大きな地震が襲い、日常というものは本当に脆くて愛おしいもの
ということを改めて思い知らされると、こういう何も起こらないけれど
静かな生活、って本当はPerfect daysなんだろうな、とつくづく思う

何も起こらないといっても、日々小さな出会いや事件はある
かといって、平山は人と深くかかわろうとはしない
いつも穏やかに思いやりをもって対処する
同じように見える一日でも、同じ一日は決してない
植物は確実に毎日成長し、自分も毎日年を取り、小さな出来事は起こる

一度深く傷ついた人は、怖いのだろうな
でも、静かに静かに人と少しでもかかわって、いる場所を見つけて
やるべきことをキチンとしていく、それこそが生きる、ということなんだろうな

人生がパーティじゃなくても、誰にうらやましがられることなくても
自分が地に足つけて、しっかり生きていればそれは、とても誇れることなんだと思う

大勢と大騒ぎする楽しさと違って、平山は毎日の生活の中に小さな喜びを見つける
特技を持っている
それはとてもとても大事なもので、その喜びを役所さんは、ものすごく上手に
演じていらっしゃる
 
彼は、失楽園、うなぎ、Shall we dance?、孤狼の血、そのほかテレビでも
良い役者さんとして活躍していらっしゃいますけれど、どれも無口
そして自分をさらけ出さない、という役、お上手ですね、色気がまだあります

実際はお茶目な方らしいですけれど(笑)

今回はドイツの方が監督なさっているので、小津映画の影響が強い、とか
やはり選曲などあちらの方の感性がかんじられます

TTT(The Tokyo Toilet).... 東京渋谷区内の17か所の公共トイレを新たなデザインで
改修していくプロジェクトで、TTTの真の価値は建築的価値のみでなく、
日々汚れていくトイレを毎日毎日掃除し続ける掃除員の奮闘にこそあり、
アートの力を通じて掃除員の皆さんへの感謝や
敬意を表したい、という気持ちが映画の根底にある、ということも嬉しいことの一つ
日本にはトイレの神様、という言葉もあり、一番人が嫌がりそうなところを
美しくするのは、神様に喜ばれることでもある、という考えがありますものね

また私の大好きな木漏れ日に注目してくれたことも嬉しかったことの一つ
英語でぴったりな言葉、見つからない

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お時間あったら是非ご覧になってください
後から語りたくなる(笑)。そしてじわじわと効いてくる不思議な映画です

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